リスが媒介となる感染症
感染症法によって、感染病に関しての安全が証明されたリスのみが、日本に輸入されています。
しかし、野生生物である限り、発症しない確率がないわけではありません。
リスによって人間に病原体が伝播する可能性のある共通感染症のうちのいくつかを、ここでご紹介します。
ペスト
ペスト菌によって発症する病気で、リスを含むげっ歯類にもよく感染します。
ペストにかかったリスの血を吸ったノミを媒介にして人間にも感染しますが、1926年以降、日本での感染例は報告されていません。
しかし1998年、ペストにより輸出用のプレーリードッグが大量に死亡する事故が、アメリカで起こっています。
狂犬病
狂犬病も日本国内での感染例は、近年報告されていません。
狂犬病は、狂犬病ウィルスに感染することによって発症する病気で、人間やリスを含むすべての哺乳類が感染する共通感染症です。
現代においても治療法が確立されていないため、世界中で毎年5万人以上の死者が出ており、発症するとほぼ100パーセントの確率で死に至ります。
名前からしてイヌを媒介とした病気のようなイメージを持つ人が多いようですが、すべての哺乳類に感染する病気ですので、リスやハムスターなど、一見すると意外な動物が媒介となり感染する可能性があります。
狂犬病ウィルスは弱いので、噛まれたら傷口をよく洗った後に消毒液などで消毒すれば、大半のウィルスは死滅してしまいます。
野兎病
野兎病菌(やとびょうきん)に感染することによって発病し、特にウサギなどのげっ歯類に多く感染します。
非常に感染力が強く、咬まれたりした傷口だけでなく、健康な皮膚からも侵入し感染します。人間が感染した場合、早期に治療を開始すれば回復します。
2002年にアメリカで、プレーリードッグが野兎病で大量に死亡する事故が起きています。
レプトスピラ症
レプトスピラ菌による感染症です。
この菌がリスに感染すると、腎臓内で増殖し尿から排出されます。
レプトスピラ症にかかったリスを飼育した場合、菌を含んだ尿に汚染されたトイレ砂や床材、巣材などを掃除する際の、接触によって人間にも感染します。
日本では1970年頃まで毎年50人以上が、レプトスピラ症によりなくなっていました。
近年では感染例が激減しましたが、1999年に八重山諸島で集団感染が報告されています。
類鼻疸
類鼻疸菌(るいびそきん)に感染することにより発症します。
汚染された土や水などから、経口的に摂取することによって感染します。
2005年には、台湾で類鼻疸による死者が6人報告されています。